水質保全を第一としたヨーロッパの治水


ヨーロッパ 風景
ヨーロッパは、イタリアの「水の都」と名高いヴェネツィアをはじめ、水との関わりが深い地域です。また、日本とは気候や環境が違うので、治水の方法に関しても大きく異なっています。
今回はヨーロッパの治水について紹介します。

ヴェネツィアの治水

ヴェネツィアは「水の都」、「アドリア海の女王」などの様々な別名をもつ、運河が縦横に張り巡らされている都市です。アドリア海の最深部のヴェネツィア湾にできた「ラグーナ」の上に建設されており、元々は沼地だったとされています。ゲルマン族の侵入から逃れるために建設された都市として、古くから海洋貿易や歓楽で有名でした。現代では世界遺産に「ヴェネツィアとその潟」の名前で登録されているため、多くの人が知っている都市でしょう。
そんなヴェネツィアの治水は一風変わっています。まず、家は建てる際にやわらかい地盤の上に建物を作ることになるので、下の固い層まで無数の木の杭を打ちこみます。(打ち込んだ杭の数を都市全体で見るとかなりの本数のため、『ヴェネツィアを逆さまにすると森ができる』と言われています。)その杭の上に石の基礎を置きレンガで壁を立ち上げますが、重い建物になってしまうとすぐに沈んでしまうため、高さを抑え、建物の開口部を多くすることで、なるべく軽くなるように工夫した作りになっています。
それ以外にも、ドア枠に膝下ぐらいのレールを設けて、冠水しそうなときにはレールにステンレスの板を挟んだり、各部屋に繋がる廊下部分を水槽のように設計したりと、水が浸入してもそこで食い止めるような仕組みを取り入れています。

家屋だけでなく都市自体も治水に対応していて、道路の真ん中には低い台をいくつも連ねたものがあり、洪水になったときはその台が道代わりになります。また、浸水がひどいときには外に机を並べて道をつくる、板を浮かべて船代わりにするなどの水都らしい光景が見られます。現在は温暖化などの影響で水位が上がってきていることに加えて、島が毎年数ミリづつ地盤沈下をしているので対応が急がれています。

オランダの治水

ヨーロッパで特に高い治水技術をもっているといわれるのはオランダです。オランダからは、江戸時代に日本にも様々な治水技術が伝えられました。オランダ周辺はライン川、マース川、スヘルデ川に囲まれた「河口デルタ」に位置し、国土を広げるために海面を干拓したので、国土の大部分が海面と同じか低くなっています。そのため、治水事業をしっかりと行う必要がありました。
河底を浚渫(しゅんせつ。川底を掘って土砂を取り除くこと)して流量を確保し、堤防をはりめぐらせ、高潮対策として河口に堰を築くというかなり近代的な治水技術を早くから作り上げていました。現在はヴェネツィア同様に温暖化による水位上昇が懸念されています。

その他の欧州諸国の治水

ヨーロッパ全体でみれば、イタリアやオランダ以外は気候が安定している地域が多いです。そのため大規模な大雨による洪水などがあまりなく、20世紀以後から本格的な治水事業がはじまりました。ダムなどを建設する近代的な治水事業が進みましたが一方で、環境に対する負荷が大きいので河川環境復元へシフトしています。ヨーロッパ全体で見ると、治水事業よりも環境保全や水質保全の動きの方が活発であるといえます。
また、ドイツやオーストリアの都市域は、100年に一度の大規模な水害に耐えうる治水事業を行うことで、治水事業はほぼ完成している状態になっています。

おわりに

今回はヨーロッパの治水事業について紹介しました。ヴェネツィアやオランダの治水事業にはかなり進んでいて、日本も参考にする点があると思われます。
この2つの地域が直面している温暖化に海面上昇は埋立地などが多い日本も他人事ではないかもしれません。今後の動向に注目しましょう。

水と生活の歴史

水と生活の歴史

人類有史の頃から水に関する記録は様々な文明で遺されてきました。今日、私たちは労することなく水を飲み、生活はもちろんのこと大量生産のため水を使いますが、これまで培ってきた先人たちの歴史に触れ、普段使っている水がかけがえないものであることを知るためにこのサイトを制作しました。