治水における現在と過去の大きな違いとは


治水における現在と過去の大きな違いとは
水は人が生きていく上で必要不可欠なものであり、いわば生命の源です。しかし、水は時に私たちに甚大な被害を及ぼす原因にもなりかねます。洪水や高潮、記憶に新しいものだと津波なども挙げられます。治水とは、そういった水害やそれらが原因となって起こる地滑りや土砂流などの土砂災害から人々を守るために行う事業のことです。今回は治水の歴史から現在と過去の治水方法の違いについて、わかりやすく解説していきます。

治水とは?

まずは治水とはどういうものなのか、ということを簡単に説明していきます。冒頭でも述べたように、治水とは水害から人々を守るための対策です。例としては堤防や新しい川を作り、水量を調整することなどが挙げられます。そのため治水ダムの水を飲料用水としては活用できません。では飲める水と飲めない水、それぞれのダムの違いは何なのでしょうか。次からは飲料用水用のダムと治水ダムの違いを見ていきましょう。

治水ダムと利水ダム

治水ダムは洪水の一部を一時的に貯めることで河川下流部の水量を調整し、洪水被害の軽減を行います。洪水時に水を貯める必要があるので通常時は容量を空にしてあります。一方農業用水や水道水用のダムを利水ダムと呼びます。このダムは目的に応じた水を確保し、不足時に補給する役目を担っています。簡単に比較すると治水ダムは普段空っぽのダム、利水ダムは普段水を貯めているダム、ということです。

日本の治水の歴史

皆さんは治水というものがいつ始まったかをご存じですか。なんと西洋では文明が始まったと同時に治水が行われていたと考えられています。日本の場合は少々遅れを取るものの、弥生時代には開始されていました。この時代は、洪水を避けるため扇状地や河川から離れた地域で水田が営まれことが多くありました。また、氾濫から集落・耕地を防御するための排水路や土手の遺構なども発見されています。特に日本の場合は狭い国土に山があり、多くの川が流れているため、弥生時代においても治水は欠かせないものだったと考えられます。

治水方法の変遷

文明の発展により衣食住などさまざまな文化は大きな変化を遂げてきました。治水は過去と現在で大きな差はないものの、少しずつ文明と共に変化しています。以下、治水の変化とこれからの手法についてご紹介いたします。

主な治水方法

基本的な治水方法は現在も同じです。

  1. 堤防を作ることで川の水があふれないよう防ぐ。
  2. 今ある川とは別の運河を人工的に作り、水の流れを人が住んでいない場所へと移す。
  3. 水量を調整し、川の流れを弱める。

以上の3点が基本的な方法です。

ここでの大きな違いといえば、現代ではダムが建設されたこと、そして素材に鉄筋コンクリートが用いられていることなどが挙げられます。昔はコンクリートのような人工物はなかったので、木材などの自然物を素材として堤防などが作られていたと考えられています。

過去の治水の特徴

それぞれ「主な治水方法」のところでご紹介した1~3に当てはまる方法が過去の治水方法にもあります。

1.に当てはまるのが、かの有名な武田信玄が築いた信玄堤。堤防を頑丈にするために、祭りの神輿をあえて堤防上で担がせ、住民に踏み固めさせたといわれています。
2.の運河を分けるという点においては、徳川家康の利根川東遷事業がこれに当たります。江戸時代以前、東京湾に注いでいた利根川を現在の位置に移動させたのが徳川家康です。
3.については丸太を組んで川に沈めることで流れを弱めていた「聖牛」という方法や、枯れ枝を束にして沈めた「粗朶沈床」などの方法が挙げられます。

これらは現在は伝統的治水工法と呼ばれており、全国で再現されているところもあるそうです。

現代における治水とダムの問題

現代では上記の3にあたる、ダムによる水量の調節によって行う治水が主流となっています。しかし、現在「八ッ場ダム問題」を契機として「ダムに頼らない治水」を目指す動きが進んでいます。
八ッ場ダム建設において論点となっているのが「自然環境の破壊」と「歴史遺産の水没」です。ダムを作るということはその土地を掘り、水が入るだけの穴をあけるということです。そこに住むことができなくなるのはもちろん、そこにあるさまざまな歴史遺産も水底へと消えてしまうことになります。
さらにダム建設を行うなかで問題となっているのが、治水力に対してのリスクが大きすぎる、という点です。住人達にとって故郷がなくなることは多大なリスクです。しかし、八ッ場ダムにはそのリスクを冒すだけの貯水力はないとされています。このように、メリットとデメリットの比率が合わない計画を提案した結果、八ッ場ダム問題は大きく発展してしまったのだと考えられます。現在ダムの建設についての結論は確定していませんが、近い将来「ダムに頼らない治水」というものが実現するかもしれませんね。

おわりに

「治水」という単語だけだと身構えてしまう部分がありますが、しっかりひも解いていけば実際はとても身近な存在だということがわかります。いきなり治水についての意見を発信することはとても難しいです。まずは治水がどういうことなのか、現在はどういった方法がとられているのか知るところから始めてみましょう。

水と生活の歴史

水と生活の歴史

人類有史の頃から水に関する記録は様々な文明で遺されてきました。今日、私たちは労することなく水を飲み、生活はもちろんのこと大量生産のため水を使いますが、これまで培ってきた先人たちの歴史に触れ、普段使っている水がかけがえないものであることを知るためにこのサイトを制作しました。